味のしないユーカリ

Esaay
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How’s goin guys, its Koshin(@k__gx88

 

「それ違うって伝えたの忘れました?」僕は不愛想になりながら飼育員に対しそっぽを向いた。

君の様な思考にはこれで十分と云わんばかりの顔をしている彼から差し出されたモノ。剝き出しのユーカリが僕を逆撫でる。

与えられたものに1つもピンと来ない。僕の何を知っているのか、皆目検討もつかない。

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理想と現実

 

その身分が故に一声で何でも手に入ってしまう「ジャスミン」は、酷く貧困な故に泥棒を働くことでしか食物を手に入れられない「アラジン」に街中でばったりと出会った。

暮らしが対照的な存在ではあるが、狭い鳥かごでの生活を送ってきた彼女にとって、彼の弱者に対する優しさや自由を愛する姿勢に次第と触発されていった。

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勝手気ままに行動できるほど、僕らはもう自由ではない。なにかと時間という概念に縛られ、明日を考えては憂鬱になり、そそくさと家路に着く。

無論、故意的に人と接してみても、どこか他人事のような雰囲気が互いを包み込み、ひんやりとした空気に苛まれる。現状を打破すべく、いつかは王宮に住みたいと願ったこともある。

環境に嫌気がさし、もう王宮から飛び出したいと思うこともある。上手くいかないオンパレードの中、周囲はパレードの如く光り輝く街中をウロウロしている。嗚呼、「ジーニー」よ、君は一体いつ顔を出してくれるんだい?

 



no dance anymore

 

ある日、檻の間から顔をうずめながら遠吠えする犬と目があった。威嚇しているのか腹を空かしているのか、はたまた構って欲しいのか。そんなことしたって他から見ると怖くて近づけやしない。

だが、ふと気付く、その目は僕を見ているわけではなかった。こちらの目を通して映る彼自身の境遇を客観視し、怒りに身を任せている。鉄格子を視界からとっぱらって外を眺め、野生という本能を喚び起こしている。四角い枠組みを忘れたくて仕方がない、そう思えてならなかった。

さて、フィルターバブルという概念が浸透し始めて時が経った。見たくないという自分の意思と同調する様に、コンピュータが不要な情報を遮断していく。しまいに、周りには指向性ある関連情報ばかり溢れている。

これでは心理的に受け付けないと判断した情報は、触れられることなくゴミ処理場に行ってしまう。不都合な真実が決して表舞台に晒されないが如く。レコメンド機能は言うまでもなく利便性に長けている、と思っていた僕はもういない。

与えられている餌に、僕も満足しなくなってきている。鉄格子の如く規律的に並んだ四角い世界から飛び出し、感覚に従ってみたい。

 



 

何にも左右すれずに意思決定してきた。その分、身から出た錆の臭いが染み付いて取れないこともある。

だが、錆の重なりと流した汗によって僕の色が出来上がってきた。その時分の指向性によって次なる趣向を決められるなど片腹痛い。

ただ、飼い慣らされていることを忘れるほど馬鹿でもない。もはや金星から降ってくる未知なるユーカリに埋もれたい。

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