3. Anna Glynn
ビクトリア州の農村で生まれ育ったアンナ・グリンは、絵画や彫刻のみならず音楽や映像なども手掛けるマルチメディアアーティストとして活動している。
そんな彼女は、イギリスの入植地だった頃のアーティストによって描かれた絵画やデッサンを再表現する分野「コロニアル・アート」の先駆者としても知られている。
ある1人の画家の昔話から始めよう。
イギリスからの流刑囚の1人に「ジョセフ・リセット」という画家がいた。彼はオーストラリアの地で労働する他の流刑囚や集落、そして風景や動物たちを水彩画に描写した。これらの絵画は本土・イギリスに送られ、オーストラリアという新しい植民地を知るための広告としての役割を担っていた。多くの画家もこれに続き、彼らの作品は、ヨーロッパともいえる風景の1つ1つを世界中に宣伝した。
さて、ジョセフの作品の風景画をそのまま利用し、その上で流刑囚を擬人化したカンガルーに変えたアンナは、何を思うのか?
「壮大な自然の中に佇む建造物を眺めるカンガルー」
謂わばファンタジー色溢れる当作品を通し、決して変わることのないオーストラリアという歴史と、オーストラリア人という潜在的にある異人種という概念に対し疑問を促しているのかもしれない。
何気ない出来事に対して疑問を抱き、個性とは何かを考えせてくれる・・・
*Instagram : @noosaregionalgallery
さいごに
「アート」とは、或る出来事を作品を通し社会へと問題提起することです。
観た者によって感じる部分は様々ですが、作者が思い描く問題の「顕在化の舞台」であることに変わりありません。
効率化・時短・楽といった風潮が推し進められる現代社会の中で、時には立ち止まりながら、自身が当たり前と考えるモノについて思案することが大事なような気がします。
日本と同様、オーストラリアには数え切れない程の美術館やガレージショップなどが存在します。著名・無名問わず多くの作品に触れ、言葉の壁がある異国でこそ「何か」感じ入る体験ができるかもしれません。
渡豪される方は是非チェックして足を運んでみてはいかがでしょう。
一見の価値がそこにはあります!