Esaay

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侘しさを思い起こす珈琲

焦燥感に駆られながら見た空は白く泣いていた。「あの子」が笑わなくなったのは一体いつからだろう。耳元の囁きが僕の思考を歪める。それが過去の偶像なのか未来からの警鐘なのか、と思案していると「きゅー」とけたゝましくケトルが鳴いた。嗜みを覚えた珈琲の香りが答えの在処へのヒントに成り得た。
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声帯を忘れたニワトリ

忽然と居場所が分からなくなった。数日前まで痛みのあった足の裏は、破壊と回復を繰り返し石のように固い。名前も知らない歩道橋の端に腰掛けて靴紐を結び直す。風に乗ったゴミが眼に侵入し、考えるより先に中指が目を痛みつけた。ぼんやりとした視界が透明になった時、聳え立つビルに顔を覗かれた。
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味のしないユーカリ

「それ違うって伝えたの忘れました?」僕は不愛想になりながら飼育員に対しそっぽを向いた。君の様な思考にはこれで十分と云わんばかりの顔をしている彼から差し出されたモノ。剝き出しのユーカリが僕を逆撫でる。与えられたものに1つもピンと来ない。僕の何を知っているのか、皆目検討もつかない。
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豆腐と僕

心なしか此処のところ厭に豆腐が目につく。「生姜と醤油」さも最適かのような組み合わせに、うんざりしてきた。「冷やっこ」として成立し、あと一品の代表格であるサブ的存在に対し、時間をかけて可愛がるつもりなど毛頭ない。今日もまたフィルターを外し、残り汁を流し棄て、雑に割いては盛り付ける。
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ティッシュとハンカチ

「いつ迄この匂いと付き合わざる負えないのか」その声に耳を傾けながら僕は頭を悩ませた。腰を上げれば手に届くティッシュを傍目にハンカチで済ましてしまった、たった1滴の醤油を拭き取るのに。「それ、僕?」その様な感覚を味わうことは度々あったが、使用者になって俯瞰から得るモノもあった。
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