作家の一言で映画製作が始まった
監督を務めた福田氏とは、どのようにして出会ったのか。
「四ツ谷で写真の展覧会を行った時、たまたま見に来てくれた写真家が気に入ってくれたんだよね。そのあと、面白いイベントやってるよってことで当時SMスナイパーの編集だった福田くんが紹介されて来たんだけど、昔は今以上に胡散臭い雰囲気が凄かったよ(笑)」
2019年頃に雑誌「バースト」に掲載されたことが映画製作の序章だったという。
「東京キララ社が主催する『公開編集会議』というイベントが行われて、我こそはって人達が飛び込みで自分を雑誌に取り上げて欲しいってプレゼンし合うんだけど、僕は即採用が決定したんだよね。それで担当編集者の福田くんが取材として八潮秘宝館にやってきたんだけど、相当やべーなって思ったらしい(笑)だって、本来はバーストの取材なのに「TOCANA²の番組に出ませんか?」って口説いてきたんだもん(笑)」
海外にサーバーを置いて日本の法律関係なく裸体とか何でも関係なく映しちゃう番組を構想していたという。
「過激な番組を作ろうって話だったけど、それだと収益化が図れないってことでマイルドになってしまった。そして『ネットで噂の「ヤバイニュース」超真相』っていう特番としてアマプラでの放映ってことで落ち着きましたね。でも、この番組があったからこそ映画が製作できたんだよ」
※² TOCANA:20代後半~30代向けに「見たい・聞きたい・深めたい」をモットーとし、世の中の不思議な話題・カルチャーに特化したニュースサイト
コロナ騒動の2020年に転機が訪れたと笑う。
「2019年12月、女性作家の濱野ちひろさんが八潮に取材に来て下さったんだけど、その時に映画冒頭でも流した『ラブドールとセックスする動画』を観てもらった。そしたら、この映像をドキュメンタリーとして編集して映画化すれば稼げるんじゃないかってアドバイスもらって…。従来はイベント会場で流したりDVDとして手売りするしかしてこなかったけど、“あ、その手があったか” と思っちゃった」
ロフトのイベント運営も手掛けている福田氏。コロナ禍が始まった2020年には相次ぐイベント中止により心身共に絶望的だったそうだ。
「たまたま暇だったから映画製作を頼んだら快く受けてくれた元々僕が撮影していた映像を土台にして、直ぐに追加撮影や編集が始まったんだよ。例えば『靖国神社のシーン』は何年か前に友人と撮影したものだったんだけど、訳を話して買い取った。あと『人形を洗うシーン』はスゴイ絵になるって分かってたから、ちょうど洗おうと思ってた子の作業をストップして福田くんのスケジュールを確認したりして…。1月から制作を始めて4月くらいには完パケしてましたね(笑)」
土台があったからとはいえ、その凄まじい作業スピードには舌を巻く。また、映画成功の舞台裏にはポスターの作用も大きかったと言及する。
「そもそもビジュアルポスターが秀逸で、大袈裟ではなく映画館で最も目立つ存在だったのは大きいと思う。黄色と赤色って本当に輝いてみえるんだよね。パンフレットも良い出来だったけど、福田くんは自分の撮った写真しか素材として使いたがらないんだよ。僕も写真家だから僕の撮った写真も数枚くらい使ってくれって言ったのに、一枚も採用してくれなかった(笑)」
さいごに、映画公開を受けての心境の変化等こう語る。
「反響は凄まじいもので知名度が一段と上がったのは嬉しい。アングラ界隈では有名だったけど、そうじゃない方面にも『兵頭』の名が広まったと思うね。まあ金払って観に来ているわけですから、ある程度は興味ある人間ばっかなわけですよ。SNSでも高評価の声が多くてビックリしてて…。でも配信ってなったら否定的な声が増えるとは思う(笑)とはいえ僕としては気持ちに変化はなくて、今後も良い写真を撮り続けていくだけですよ」
八潮秘宝館に関する詳しい情報は公式ブログを御覧ください。